喫茶Honfleur掲示板 2007〜2009年

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Message#14513 2008年6月22日(日)10時19分
From: 和井 恵
変更
Re13:サンカルパ
元芝さんのメッセージ(#14492)への返事

> 和井さんに質問。
>
> 現在の俺ね、マインドには性欲は存在してるんだけど、
> 性欲による快楽はあってもなくても構わないというか、
> 別に自身にそれが存在している・・・という認識のみでこの煩悩に巻き込まれない
> (俺的に言うと性欲が生起しても掴まない。掴んでも構わないけど
> それが楽しそうにも苦しそうにも見えない。なので進んでは掴まない)状態になっています。
> 食欲的にも、睡眠的にも。
> だから、食べることを忘れてて一ヶ月近くして友達と食事する約束した時に
> 「・・・あ。久々に食事するんだわ・・・」となったりします。
> 食べてもいいし、食べなくてもいい。
> しかし、肉体を維持するために食欲という煩悩がマインドにあることだけは認識できる。
> 万事がそんな感じになってきています。
>
> ただし、世の中にはお付き合いというものがあるので
> 食事も睡眠もセックスもしないといけない時があるんで、
> それはそれで楽しめる・・・みたいな状態です。
>
> つまり、マインドにそれらがあるのは認識できるんだけど、
> 超えてしまっているというか・・・そんな感じです。
>
> 現在日本なので師に聞くわけにもいかないので
> ちょいと仏教的にはどんな状態・ステージなのか教えてくれませんか?

この文章を読む限りにおいては、「心解脱」のかなり進んだ状態で、
一応、「不還果(苦しみの連鎖に戻らない)」を得ていると言ってもいい状態ではないでしょうか。

ただね、先に「慧解脱」をしておいた方が、後々何かと便利なんですよ。
釈迦の修行システムでは、必ず先に「慧解脱」を成就させるようにしています。
ですから、そのために縁起の法を説き(相互依存に頼ったままの、自立できない状態は苦しみである)、
三法印や四聖諦を説いて、「明智を獲得する」ための下地を造っているわけです。
そして、十二縁起の最初の「無明(根本無知)」を破壊する、と。

これに対して、「心解脱」は、「行(欲求)」と「識(識別)」を止滅させるのです。

この「無明」「行」「識」と、仏教で説かれる「三毒」との関係は、
「無明」が「痴(無知)」を生み出す根源であることは、まぁ、すぐに解りますよね。
「行」は、潜在的な形成力で、簡単に言ってしまえば、欲求、つまり「貪り」の根源なんです。
「識」は、識別ですよね。これは、自と他の区別を生起させて、「三つの慢」を造り出す根源なんです。
そして、この「慢」から生まれて来るのが、闘争心や自惚れから生じる怒り、そして卑屈さ、という
「ジン(漢字を上手く表記できない)」の変化した三つの形態(破壊衝動)なんですね。

ですから、「識」を止滅させれば「慢」という「結」が解(ほど)けて、「ジン」が消滅します。
そして、「行」を止滅させれば「貪」が消滅し、「無明」を破壊すれば「痴」が死滅する。

最初に「慧解脱」で無明を破壊すれば、行や識は「慣性の法則」ですぐには停止しなくとも、
そのスピードはかなり落ちますので、セガ〜ルさんの喩えのように、
50〜60キロでは事故っても、10キロ未満では安全だ、ということになるのです。

ところが、先に「心解脱」の方に手をつけてしまうと、副作用として「行」の停止が先に起こり、
「停滞現象」が起きてしまう。つまり、その状態から「無明の破壊」まで、なかなかたどり着けない。
何故ならば、そこへ向かう「ベクトル(欲求・モチベーション)」が生起しないからです。
これを、確かatomさんは「悟り地獄(だったかな?)」と呼んでいましたよね。

先に「心解脱」の方に手をつけてしまうと、この落とし穴に落ちてしまうのです。
そして、大乗仏教の修行は、主に「心解脱」にアプローチするシステムなので、こうなりやすいのですね。
でも、逆にそれを善用して「みんなを悟りに導くまでは、自らゴールには到達しないぞ」という、
「大乗の菩薩」の実践をすることも出来る訳です。
しかしそのためには、「誓願(強いモチベーションを造り出す)」を、
絶えず強く、意図的に修習して造り出さなければならない(精進)ことになるのです。

ここでちょっと、「慧解脱」の成就の状態を、少し具体的に説明しましょう。

慧解脱を成就すると「直感智(インスピレーション)」が活発に働くようになります。
それまでは、あれこれと考えて答えを探していたものが、一瞬で、直感的に「見えてくる」のです。

すると、「思考」の働きが一変するのです。

つまり、それまでは「答えを探す」ためにしていた「思考(暗中模索の思考実験)」が、
「見えてしまった答え」が正しいのかどうかを「確認する」ための「思考(検証・論証・証明)」に変化するのです。
そして、この「論証する」ことこそが、「思考」という働きを、最も有効に活用できる使い方なんですね。

とにかく、脳がターボエンジンに切り替わったように、猛烈な勢いで働き出すのです。
そのために、睡眠時間が極端に少なくなります。
絶えず、「検証のための思考」を繰り返すために、意識がそちらに引っ張られ、
日常では、つまらないミス(うっかりミス・心ここにあらず)を頻繁に誘発してしまうのです。

私もこれには、少し参ってしまいましたね。
仕事をする上で、職場にかなりの迷惑をかけてしまったからです。

これの対処法としては、四禅定が最適なのです。

「熟考」と「吟味」、これは「検証をするための思考」が働いている状態。
そこには「慧解脱」を得たという「喜び(実感)」と「楽しみ(思考することの面白さ)」が在るのです。
これらの過度の「働き過ぎ(一種の興奮状態)」を沈めて、心の平安を取り戻すのに、
それらの「要素」を客観視して、一つ一つ「停止」させてゆく。
これが「四禅定」の、一つの使い方なのです(他にも使用方法は、幾つかありますけどね)。

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