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http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111120/trl11112022170002-n1.htm 【16年目の終結 オウム裁判】 2011.11.20 22:12 [殺人・殺人未遂] オウム真理教に強制捜査(平成7年)が入ると会見やテレビ番組などで、教団を正当化する主張を繰り返した。早大のディベート・サークルで鍛えた弁論術を生かし、相手の考えを封じる姿は「ああいえば、上祐」と呼ばれた。 オウムの流れをくむ宗教団体「ひかりの輪」の上祐史浩代表(48)。いまは、あれだけ信奉していた「尊師」こと麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚(56)を「麻原」と呼び捨てにする。 「裁判が終結すると、今度は死刑執行が遅かれ早かれ始まるだろう。麻原は、執行前にきちんと反省すべきだ。反省の言葉を発しないまま死刑になると、神格化してしまい危険だ」 一連のオウム裁判を通じて、一度たりとも真相に向き合おうとしなかった麻原死刑囚の態度に、強い疑問を感じているという。 他の死刑囚、被告らについては「反省しているように見える人もいるし、そうでない人もいる」と冷静に分析する。 だからといって、教団の正当化を吹いた自分の過去が清算されるとは思っていない。「道義的責任は免れ得ないと思っている」 教団のモスクワ支部に長くいたことなどがあって、地下鉄サリン事件などについての全容を知る立場にはいなかった。だが、「教団の関与はうすうす感じていた」と告白する。 幹部同士が地下鉄事件の証拠隠滅を確認するような会話を聞いた。麻原死刑囚が「サリン事件は教団が悪いことをした」と発言するのも聞いた。 「事実と違う説明をしている自覚もあった。だが私自身、深い洗脳状態にあり、教団を守りたい、丸く収めたいと考えていた」 自身は、殺人事件への関与はなかったものの、教団による熊本県内の土地取得をめぐる国土利用計画法違反事件で偽証罪などにとわれ、懲役3年の実刑を受けた。起きるはずだったハルマゲドンが起きず、独房の中で少しずつ“洗脳”が解け始めたという。 出所後、1度だけ、麻原公判を傍聴したことがある。引きずられるように法廷に現れ、顔や手を小刻みに震わせる麻原死刑囚を見て、「『壊れた、終わった人』と感じた」。その後、教団の後継団体「アレフ」の代表となった。 麻原死刑囚の呪縛と「完全に決別した」というのは5年前。「自分なりの神秘体験で、麻原への精神的帰依が心が晴れるように消えた」と説明する。 ところが、オウムの後継団体「アレフ」の信者らにとっては、麻原教が上祐教になったことになる。団体の主導権争いが起き、4年前に約160人の元信者とともに教団を離れ「ひかりの輪」を設立した。 反省しているなら解散を−。そんな声も届くが「宗教家をやめるつもりはない」と断言。「オウムなど従来の宗教を超える、新しい宗教の創造を目指す」と“崇高”な目標を掲げる。 だが「ひかりの輪」は、公安調査庁から「オウム真理教上祐派」とみられ、団体規制法の観察対象となっている。施設周辺では、立ち退きや解散を求める住民運動も続いている。上祐代表の考えや理想は、社会には共感はないのが現実だ。(大島悠亮) |