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| Message#35136 2010年6月5日(土)00時24分 From: 聖者ぼんちリンポチェ |
| 神風代理人さんへ |
| 布教の授業で聞いてきたエピソードです。 先だって、ここで布施の話が出ていましたので、参考までに。 四国ではお遍路さんに対する布施、お接待が大変盛んですが、 高知県のある山間部の遍路道で、無人のお接待があったそうです。 物はトマトのお接待。 「どうぞ、お持ち下さい。」と書いてあったんだそうです。 その後に一筆。 「お代はいらんぜよ。たぬき」 そう署名してあったそうです。 この話を聞いて、大変感銘を受けました。 ３つの布施、すべてを、 理想的なバランスで満たしている見事な布施の方法です。 まず、トマト、という財施、これはＯＫです。 一般的な財施ですね。 しかし、次に難しいのは「無畏施」です。 いわゆる、普通の意味で安心を与える無畏施は、 人対人において為されるものですが、 財施を伴う場合は、無畏施は急に難しくなるものです。 極端な話、ここにどう見てもバリバリのチンピラがいるとします。 このチンピラが布施に目覚めて、いざ物を施そうとするわけですが、 このまま布施を始めても、相手に疑念を抱かせるだけです。 何か見返りを求められるのではないか、 後で無理なことを言われるのではないか、 畏れる気持ちを起こさせずにはいられないでしょう。 しかし、こうまで極端な事例でなくとも、 財施と無畏施を完璧に共存させるのは至難の業だと思います。 よく知っている相手であれ、受ける側は申し訳なく思ったり、 義理に縛られたりして、こだわりのない心で布施を受けることは 相当に難しいものだと思います。 これではやはり無畏施とは言えないでしょう。 それを見事に解決してしまったのが、 「お代はいらんぜよ。たぬき」という一文です。 施主との個人的な関わりを気にすることなく、 それでいてありがたく接待を受けることができるわけです。 しかも、この布施の仕方そのものが、 多少なりとも仏の道に足を踏み入れようとするお遍路さんに対して、 布施についての見事な説法、つまり法施になっているわけです。 この法施も、人対人ではつい押し付けがましくなりがちで、 説教じみてしまうところを、いとも自然体なるあり方で、 するりとお遍路さんの心に伝えてしまうわけです。 これほどスマートで素晴らしい布施の仕方は、 なかなかに耳にすることが出来ません。 我々も是非見習いたいものです。 |