Message#1887 2005年11月30日(水)00時59分 From: 山本英司 | |
「どうする!麻原裁判控訴審」詳報 |
どもです。 遅ればせながら、11月27日のイベントの詳報です。 以下、基本的に地の文は常体(だ・である調)を使用し、発言内容は「」内に記しますが、一言一句の忠実な再現ではなく、印象的な部分の要旨であることをあらかじめお断りしておきます。 四谷駅前・主婦会館プラザエフ8階「スイセン」にて12時開場・12時30分開演とのところ、12時20分頃到着。受付で資料を受け取る。無料。会場には既に70〜80名ほど。報道関係者多数。資料は「タイムスケジュール」と弁護団作成の「麻原彰晃氏控訴審の経過概要」、「録画・録音に対する規制について」、及び『週刊新潮』11月17日号の記事「元受刑者が見た「麻原彰晃」は「廃人寸前」だった」のコピー。「録画・録音に対する規制について」によると、「本日の講演・討論会の録音・録画(写真を含む)に関しましては、原則として自由としておりますが、麻原氏のお子さん(二人の娘)を被写体とする写真撮影、ビデオ録画は一切禁止いたしますので、絶対に撮影しないようにお願いいたします」とのこと。 予定より少々遅れて12時45分開始。この時点で参加者は100名前後。『創』の篠田博之編集長や松本サリン事件の河野義行氏の姿も見える。あと、この時点で気付かなかったがオウム真理教家族の会代表の永岡弘行氏の参加。少なくとも私が気付いた限りではオウマー関係者の参加は私以外には私が誘った大学時代の友人(「東京サイコパス」名でオフ会に参加)のみ。 司会者の岩井信弁護士よりあいさつ。 12時50分より森達也氏の講演。実はレジュメが用意されていたが手違いでか受付で配付された資料には入っておらず休憩時間に受け取る。内容はいつもの話(笑)。要は、昨年の判決公判で初めて麻原被告を目撃したが、壊れているとしか思えなかった、専門家ではないので本当のところは分からないが、だからこそ専門家による鑑定が必要であると。 13時5分より有田芳生氏の講演。内容については私がまとめるよりご本人の文章を以下著作権侵害(笑)。 −−− 酔醒漫録 http://www.web-arita.com/sui0511b.html 11月27日(日)昨土曜日は服部真澄さんのボジョレー・ヌーボーの会をキャンセルし、読書をしながら静養したが、風邪がまたぶり返してしまった。四谷の主婦会館で「どうする麻原控訴審」という集会が、午後12時半から4時半まで行われた。主催は弁護団でゲストがわたしと森達也さん。ゴホッ、ゴホッ。むせながら喋っていると、身体の深奥部から不快な熱気が突き上げてきた。1週間ほど前に決まった集まりだが、マスコミをはじめ会議室はいっぱいになった。最初に森さん、そしてわたしが30分ほど話をして、松下明夫、松井武弁護士が現状を報告。松本智津夫被告の二女と三女が接見時の父親の様子を語った。わたし以外の発言者はすべて被告の人格が「壊れている」との認識を示した。わたしは法廷での松本被告の発言や態度には「詐病」(病気を偽ること)の可能性が高いと思っていた。ところが、その「信念」が揺らいだのは、実の娘が接見したときにも、身体を痙攣させ、突然の笑いを示し、まったく意思の疎通がないことを知ったときだ。弁護人、裁判官、検察官を完全に無視し続けることはありうるだろうと思っていた。弁護人がいうように紙おむつをするような情況であろうともだ。しかし、人間が人間である限り、憎んでもいない娘と9年ぶりに対面して、それを無視することはできないだろうと思ったのだ。少なくともわたしの人間観がそう判断させた。 ところが最近その認識を改めることにした。BC級「戦犯」を取材していて、「あっ」とびっくりするケースに出会ったからだ。時代は1951年。場所は巣鴨プリズン。当時、死刑判決が下され、刑が執行されていなかった「戦犯」は2人だけ。そのひとりである元軍医大尉は、判決が下されてから精神的な「異常」をきたした。会話はいっさいなし。排泄物は垂れ流し、眼はうつろでよだれを流している。担当者が床にうつぶせになった彼の排泄物を拭き、起こしあげて椅子に座らせても、足は伸ばしたままで、まるで関節が外れているようだった。米軍の精神科専門医や松沢病院で何度も鑑定を行うのだが、いずれも「精神異常」との結論が出される。ところが元軍医大尉の姉は「詐病」ではなく「正気」だと思っていた。やがて姉が金網越しに接見。口を開くことはなかったが、姉の眼には「装っている」としか思えなかった。死刑から無期懲役へと減刑が伝えられたあとのことだ。姉は2度目の接見を行う。こんども涙を流すだけで、まったく口を開かなかった。ところがである。翌日になり元軍医大尉は刑務官に丁寧に頭を下げ、「書籍をお貸しください」と小声で語った。まったく「詐病」だったのである。精神科医が何度も鑑定を行い「異常」と判断していた人物が、じつは正常だった。その理由は「正常」だと判断されれば、ただちに刑の執行が行われるという恐怖心からであった。人間はここまでのことができるのだ。ましてや、と言ってもいいだろう。カルト教祖の麻原彰晃=松本智津夫被告なら、「異常」を演じることが可能ではないのか。そんな趣旨の話をした。 集会後半では4人のシンポジウム。会場にいらした永岡弘行さんの発言を聞くと詐病の可能性が高いと考えているようだ。河野義行さんは、1審弁護団が被告人の意思を確認せずに即刻控訴したことに疑問を呈していた。それに対する弁護人の回答は、「死刑事件なので弁護人の義務だ」という。ともかく現状では裁判所が選任した鑑定人が判断を行い、その詳細がわからないまま、反対尋問も行われないままで結論が出されようとしている。まったくの密室で麻原裁判の重要な局面が決定されようとしているのだ。これはおかしい。滝本太郎弁護士が8月19日に出したコメントーー「世界が見ている麻原裁判は、より適正な手続きでされたと歴史に残さなければならない。その意味で訴訟能力の鑑定をすることに賛成だ」というとおりなのだ。ただしここでも問題がある。宮崎勤裁判を見てもわかるとおり、精神科医は自分の学説に従って鑑定結果を出す。誰を鑑定者に選ぶかというところですでに結論は決まっているのが現状だ。裁判所は「訴訟能力あり」とする。そういう結論が出るのか、あるいは「なし」となるのか。情報では「訴訟能力なし」の方向に動きつつあるようだが、そうすると裁判は一時中止となる。 −−− 13時33分より主任弁護人の松下明夫氏の報告。11月6日の「報道特集」でははっきりしなかったが、仙台弁護士会所属らしく東北弁。裁判所が選任した鑑定人とは別に弁護団でも鑑定人を選任しており並行して精神鑑定が進められているとのこと。 13時40分より一審判決当日に弁護人を受任した松井武氏の報告。「麻原彰晃氏控訴審の経過概要」に沿って話す。 以後、撮影禁止であることが告げられ、次女・三女が入場。それまでは別室で待機? 13時55分より次女(カーリー)の報告。現在、通信制大学に通っているとのこと。かつての『マハーヤーナ』等での写真は見たことあるものの、本人には初めてお目にかかる。11月6日の「報道特集」では顔が映っていなかったが、その時と同様の髪型と体格。めがね着用。これまで父親には24回接見したとのこと。特に痙攣がひどかった10月19日の接見記録を読み上げる。 14時4分より三女(アーチャリー)の報告。和光大学入学拒否損害賠償請求訴訟を傍聴して以来。あの訴訟は現在どうなっているのであろうか? 青いアイシャドー。11月6日の「報道特集」にもあったペンダントが胸元に見える。2004年9月14日に初めて接見したときのことを中心に報告。 14時12分より休憩。「後援者レジュメ」を受け取る。質問用紙を提出。 14時30分より再開。次女と三女の姿は見えず。岩井弁護士の司会のもと、森氏・有田氏・弁護人2名の計4名で討論。 会場からの質問に答える形で森氏、『月刊PLAYBOY』に書いた拘置所での麻原被告についての「あること」については、この場でも一切答えられないとのこと。 4名の中では有田氏がやや詐病説寄りの立場であるもののあくまで可能性の指摘に留まり、いずれにせよ専門家による鑑定の必要性と密室審理への反対では全員が一致(ただし、有田氏は精神鑑定そのもののの客観性について懐疑的)。 特徴的な発言として、 森氏「世間では僕と有田さんは犬猿の仲だと言われている」 有田氏「えっ、そうなの? 全然そんなことないんだけどな」 とのやりとりに場内が笑いに包まれる。 永岡氏に発言が振られる。「麻原とはこれまで7回会った。傍聴は110回。「偉大な宗教家」と弁護団が言うのを聞いて「何言ってんだこの弁護士は」と思った。詐病かどうか、正直分からない。しかし浅見定雄先生は「人格破綻ではなく逃避」と言っている。また、麻原と会ったとき、「自分はどのようにでもなれる」と豪語していたのを思い出す。拘置所にいる元教団幹部とも接見しているが、今この場に娘さんが居ないようなので言うが、「いざとなれば自分の娘でもブスリと刺せる人間だ」と聞いた」。 松井弁護士「もしも裁判所に接見禁止解除を申し立てて認められれば、永岡さんは麻原さんとの接見を受けてくれるか」 永岡氏「受ける」 仮に詐病であったとしても、公判が停止になるだけで無罪になるわけではなく、いずれ公判が再開されるのであるから被告人にメリットは無いのではないかとの会場からの質問を司会が紹介。これは私が質問用紙に書いたことである。しかし有田氏が元軍医大尉の例を引き合いに出して、死刑を逃れるためならどんなことでもする可能性があると回答。 河野氏に発言が振られる。「被告人の意思が確認できないということで控訴趣意書を提出せず、また公判停止を要求しているが、ではどうして被告人の意思が確認できないにもかかわらず一審弁護団は控訴したのか。また、控訴趣意書の骨子を一応作成したのであれば、提出しておくべきではなかったのか。どうして控訴棄却のリスクを犯してまで提出に応じなかったのか」。 弁護団が答えていわく、「死刑判決である以上控訴はむしろ義務である。また、控訴趣意書の提出に応じてしまえば、今後二度と精神鑑定や公判停止の主張を持ち出せなくなってしまうおそれがある」。 その他弁護団より、裁判所は精神鑑定を実施するとは言っておらず「精神鑑定の形式で意見を徴する」としか言っておらず、鑑定人の法廷での宣誓や弁護人による反対尋問が保障されていない、弁護人には鑑定人の氏名が明かされているものの公表を禁じられている、弁護人が選任した鑑定人が裁判所(拘置所?)による検査結果を閲覧するのは認められているものの引用は禁じられている、等々の密室審理を告発する発言があり、詐病かどうかはともあれ密室審理はおかしいと討論者全員が一致。 岩井弁護士のまとめのあいさつを受け、ほぼ予定通り16時31分に閉会。 |