http://www.asahi.com/culture/update/0123/TKY201001220459.html 弘法大師として知られる平安時代の僧、空海が唐から持ち帰りながら、実物が確認できず、幻の論文と考えられてきた「三教不斉論(さんぎょうふせいろん)」。その内容を写し伝えた江戸時代の写本を、高野山大学密教文化研究所委託研究員の藤井淳さん(33)が、東京都立図書館の諸橋文庫で見つけた。空海が持ち帰った論文の写しと考えられ、仏教史を考える上で重要な資料といえる。 「三教不斉論」は、空海が唐から持ち帰った経巻や仏具などの一覧を記した「御請来目録(ごしょうらいもくろく)」に名が見られるが、内容は不明で、写本も存在しないと考えられていた。見つかった写本は縦26センチ、横16センチほどの和とじの冊子で、文末の来歴などから江戸時代の1861年、阿波国(現在の徳島県)千福寺の僧・良応が筆写したとみられる。 今回、同論が儒教、道教、仏教の三教の優劣を論じ、仏教が最も優れていると説いた内容だったことが分かった。空海が持ち帰った書は密教関係などが多く、この論文のように他の教えとの比較論は珍しいという。 空海は唐に渡る前、すでに儒教、道教、仏教の優劣を説いた「三教指帰(さんごうしいき)」を著しており、「発見された論文は、内容が空海の『三教指帰』に通じるものがある。自らの考え方に近い論文を持ち帰ったのだろう」と、藤井さんはみている。今回の発見は、25日に高野山大学密教文化研究所で開かれる研究会で発表される。(宮代栄一) |